特別企画展のあゆみ |
The Nomads of the Mongolian Steppes – Life and Culture
2003.3.8~2004.2.14 |
●開催にあたって |
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抜けるような青い空。果てしなく広がる緑の草の海。芳香を発する草をはむ羊や山羊の群…。モンゴルと言えば、こうした大草原のイメージが思い浮かんできます。モンゴルの国土は『ステップ回廊』と言われるユーラシア大陸の温帯草原地帯にあり、チンギスハーンの生誕の地であり、ヨーロッパを震撼させた騎馬軍団の発祥の地でもあります。北部には針葉樹林地帯があり、南部にはゴビと呼ばれるまばらな草が生える半砂漠があります。しかし大部分は草原となっていて、モンゴルの草原率は国土の79%を占め、世界の『草原の国』となっています。乾燥し、且つ寒冷なモンゴル草原では、自然環境に適応した『遊牧』が古くから行われてきました。遊牧民達は、五畜と言われる羊、山羊、牛、馬、ラクダの群を、四季を応じて牧草地を移動させます。彼らは『ゲル』という、木とフェルトで出来た、分解、組み立てが簡単な円形の移動式住居に住んでいて、生活の大部分を家畜に依存しています。乳で乳製品を作り、毛からフェルトを作成し、最後に肉や毛皮、皮革として利用します。最近では、純粋に遊牧生活を送る人は年々減少していますが、モンゴル人の誰もが草原の生活に郷愁を抱いています。 この特別展は、私が3年連続でモンゴル各地を調査した際に収集した約400点の資料が中心となっています。動機となったのは、モンゴルからの留学生との出会い、そして以前読んだ国立民族学博物館の梅棹忠夫先生の『モンゴル研究』でした。 モンゴルの広大な草原で、自然と家畜と人間の生態学的バランスの上で営まれる自給自足的牧畜経済は今、世界的にも注目されているスローライフの先端を行くものと言えるでしょう。 この企画展を通して、大草原のロマンを感じていただければ幸いです。
アマゾン民族館 館長 山口 吉彦
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